学校説明会でのミニ講座

「学校説明会でのミニ講座」

シルバーカレッジ 学長 前田 潔

今年も1月15日から19日まで学校説明会を開催しました。入学希望者対象のカレッジの紹介ではほかに毎年11月に開催しますオープンキャンパスがあります。学校説明会はオープンキャンパスとほぼ同じ内容ですが、違っている点は、入学願書の受付が始まっている中で行われることです。オープンキャンパスの場合もそうですが学校説明会でも最初に私がミニ講座と称してお話をします。学長としては、「(オープンキャンパス、あるいは学校説明会に)ご参加ありがとうござします」などの言葉から始まる「学長挨拶」をするべきなのでしょうが、私は自分の思いを伝えたいのでミニ講座という形をとっています。

今年のミニ講座のテーマは「コミュニケーション」でした。その中で、1月中旬に神戸新聞に掲載された小川洋子の寄稿文を紹介して、友人、知人など身近な人の間での会話について話をしました。小川洋子というのは芥川賞作家で、いまは西宮に住んでいます。穏やかな善意に満ちた作品が多い作家です。ファンの方も多いのではないでしょうか。

小川洋子はレストランで順番待ちをしている時の、隣に座った高齢者の会話を紹介しています。少し引用(一部改変)しますと、

夫:「昔、駅前のレストランで食べたハヤシライス、美味しかったな」

妻:「ああ、そうでしたね。あのお店、なんていう名前でしたかね」

夫:「あれだよ、あれ…」

妻:「えっと… 、〇〇じゃなかったですか」

夫:「そうだ、〇〇だ。あれは美味しかったなあ」

また話題が変わって

妻:「今日帰り、お盆を買って帰りたいんです」

夫:「じゃあ、帰りに〇〇デパートに寄るか」

妻:「そうね、家にあるお盆、ちょっと大きすぎるの」

夫:「あのお盆どこで買ったんだっけ」

妻:「どこだったかしらねえ… 松本に旅行した時じゃない」

この会話を横で聞いていて小川洋子はほのぼのとした気分になったと言っています。夫婦のこの会話には相手に反対する、否定するような会話が全くなかったと言っています。日常会話では白黒つける必要は一切なく、おおらかに受け止めていいのではないかと小川洋子は締めくくっていました。

最近読んだ本の中で、結婚生活60年で一度もけんかをしたことのないオーストラリアの夫婦が紹介されていました。そのなかでその夫が「相手とうまくやっていく唯一の方法は相手に全幅の信頼を置くことです」と言っています。昔、人間は頭が二つ、手足が8本あったそうです。それを何かの折に神様は真っ二つに切り離されたそうです。以来、切り離された片割れは離れ離れになったもう一つの片割れを探し続けることになったということです。これがbetter halfという言葉の由来だそうです。